投稿日 : 2022年6月27日 最終更新日時 : 2022年10月03日

【解説】M&Aはお見合いか?- M&Aは支配権取引

M&Aは会社同士のお見合いと呼ばれることがあります。筆者もM&Aをお見合いに例えて表現することは良くあります。知らない相手を知って理解するプロセスには確かに似た部分もあります。しかし、違う部分も沢山あります。それがM&Aの難しさであり、挑戦でもあります。

 

1.M&Aとお見合い

筆者もM&Aをお見合いに例えて以下のように表現することは良くあります。小難しさを排除して、なじみのある言葉でM&Aを説明できる点で有用です。

  • M&A候補探し=相手探し
  • 買い手からの意向表明書=買い手からのラブレター
  • トップ面談=お見合い
  • M&A契約=婚約
  • クロージング=結婚

「M&A契約を終えてもM&Aは終わりではない」と言っても経験者以外にはピンときません。「M&A契約は婚約のようなものなので、それで終わりではない」と言うと、そうなのか。と理解頂けることもあります。

一生懸命検討した提案書に対して売り手側から「買収提案金額が低い。引き上げられないか。」と言われると構えてしまいますが、「ラブレターが心に刺さっていない。金額面で頑張って振り向かせてみませんか。」と言われると「そういうことか!」と感じませんか。 案件や状況にもよりますが、例えを用いることで伝わりやすくなることも有ります。


2.似ているが違う

M&Aをお見合いは似ている面も有りますが、同じでは有りません。両者の違いを意識しておくことも重要です。違いを分かった上で例えるのと分からずに例えるのは一見変わりませんが、M&Aの進め方に雲泥の差がでます。

 

M&Aは支配権の取引

M&Aは究極的には会社の支配権の取引です。売り手は高く売りたく、買い手は安く買いたいと考えます。売り手と買い手の利益は相反します。また、M&Aが終わると基本的に買い手が経営をリードし、その成果や責任はいずれも全て買い手が背負います。売り手は背負いません。

お見合いは当事者が対等であり、将来に向けって一緒に作り上げるのでM&Aとは異質です。

 

M&Aは会社の投資判断

買い手にとってM&Aは投資です。設備投資や研究開発投資と同様に、一定の予算があり、投資に対するリスク・リターンを意識しながら経営判断を行うことが求められます。大企業になればなるほど投資回収計算という数字での判断が重視されます。色々な関係者の理解を得るためには、客観的に数字で説明できることが重要となります。

お見合いは個人の私的な判断です。数字よりも感性の世界です。少なくとも投資回収計算をしたり、算盤をはじき始める人はいないはずです。

 

M&Aは目に見えない「会社」を扱う

M&Aの対象である会社は人やモノと異なり目では見えません。また、事業や人が常に動いているので売り手が一言で説明できるものではありません。そのため、買い手は事業や財務の角度から会社を調べる必要があります。その際、パンフレットや財務諸表が会社を映し出す鏡として機能します。

お見合いの場合は人が目に見えるので、調べないと見えてこないということはありません。

 

M&Aは過去ではなく、「現在」と「将来」

M&Aの目的は将来で、対象は企業です。重要なのはM&A対象の「将来」とその発射台である「現在」です。「過去」の延長線上に現在や将来があるのであれば、将来を予想する上で過去の分析が重要となります。ビジネスモデルや事業環境の変化等、将来が過去の延長線上にない場合は、過去の分析よりも将来をどう見通すかがポイントとなります。

お見合いの目的も将来ですが、対象は人です。人となりはそうそう変わらないので、目に見える「過去」や「現在」で判断されることが多いように思います。

 

3.まとめ

M&Aをお見合いに例えることは良くあります。表面的には似ている面もあります。しかし、知れば知る程、同列に扱うことに違和感を感じることになるでしょう。

とは言え、会社のM&A判断であっても、究極的には人が行う判断です。大企業であっても意思決定者の気持ちや思いがM&A判断に色濃く反映されることは多々あります。

それがM&Aに活力を与えている要因であり、算盤だけでは語り切れない大変興味深い部分でもあります。

 

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