投稿日 : 2022年9月12日 最終更新日時 : 2022年10月03日

【解説】異業種M&Aとは?-多角化戦略とM&A

M&Aと聞くと、事業拡大のための業界内M&Aを想像する方も多いかと思います。しかし、様々な目的から異業種のM&Aも数多くなされています。

1.異業種M&Aの事例

過去5年間の上場会社のM&Aのうち、買い手とM&Aターゲットの業種が異なる事例とし以下が挙げられます。これらは異業種M&Aとも言えます。

2.なぜ異業種か?

異業種を買収するということは、買い手にとって多角化を意味します。

多角化戦略は新たな製品を新たな市場で展開するものです。製品と市場のいずれにおいても既存の足場が無い状態で新しい領域に進出する取り組みになります。経営学者アンゾフが提唱した市場マトリックスに基づくと以下の青ハイライトに位置付けられます。

図 市場マトリックス:製品と市場の二軸から既存と新規の2区分を設けて4つに分類されます。

多角化を自らの力で又は他企業とのパートナーシップを通して徐々に目指す方法もありますが、M&Aを通して新規事業に参入するケースも多く見られます。

3.多角化戦略のメリット・デメリット

多角化戦略には一般に次のようなメリット・デメリットがあります。

近年では単なる上記のようなメリットよりも、「成長事業の獲得」という目的での多角化M&Aをよく目にし、積極的な買収検討企業にもそのような発想の企業が見られます。

ベンチャー投資のように少額多数の投資を行うケースもあれば、ある程度期待できる事業をM&Aターゲットとするケースも有ります。不確実性の高い時代において、花開く可能性のある成長事業やそのタネを多く持っておくことは企業の成長性や持続可能性に貢献します。

4.M&Aにおける留意点

異業種M&A(多角化M&A)は大きな可能性を秘めますが、経営判断の難しさが存在します。これに対してM&Aリスクを抑制する方法として以下が考えられます。

マイノリティ出資からの段階的買収

現状の経営に対してマイノリティ出資から入り、事業に対する知見やキーパーソンとの関係性を構築した後でM&Aを行う手法です。比較的着実な進め方ですが、全株式を売却したい株主のニーズとは相容れません。また、マイノリティ出資に特有の投資リスクが有る点には留意が必要です。

ビジネスコンサルタントの視点の活用

特定の業界に明るいビジネスコンサルタントを活用することも考えられます。ビジネスコンサルタントは業界専門家にインタビューし、事業計画上のロジックや経営の仕組みを分析します。ここで言うコンサルタントはブローカーや口利き会社のことでは無く、調査・分析会社を指しています。

キーパーソンのリテンション

事前に対象会社のキーパーソンを見極め、キーパーソンが退職せず、今まで以上に活躍できるような仕組みを設けることが考えられます。職業選択の自由の下、役職員の退職禁止を縛ることには限界が有ります。キーパーソンが安心して勤務継続できるような勤務環境の提供が重要となります。買収対象の社長やキーパーソンの退社が避けられない場合は、社内外からの人材登用が検討事項となります。

相対取引

不慣れな領域でのM&Aは通常以上にじっくり検討することが必要です。情報が限られ、早い判断が求められる競争案件(入札案件)は負荷が高く、経営判断ミスの原因となりかねません。上手く相手方を巻き込みながら、極力落ち着いて検討できる状態(相対取引)が作れると良いでしょう。

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