投稿日 : 2025年10月31日 最終更新日時 : 2025年10月17日
【コラム】支援型ファンドと財務型ファンドの違い
近年、大企業だけではなく事業承継を検討する中堅企業においても、成長戦略や財務戦略に投資ファンドを活用するケースが多く見られます。
投資ファンドの投資先企業への関与度と支援スタイルはさまざまです。代表的なものとしては「支援型ファンド(ハンズオン型ファンド)」と「財務型ファンド(ハンズオフ型ファンド)」に分類できます。
支援型ファンドと財務型ファンドの特徴
● 支援型ファンド(ハンズオン型ファンド):
経営者と共に企業価値の向上を目指す“伴走者”です。戦略立案、人材採用、営業支援、資金調達など、実務面での支援を通じて、企業の成長を加速させます。特に、事業承継や再生フェーズにある企業にとっては、外部の知見とネットワークを活用できる貴重なパートナーとなります。
● 財務型ファンド(ハンズオフ型ファンド):
企業の財務指標や資本構成に着目する“投資家”です。経営には基本的に関与せず、経営陣の自主性を尊重するスタイルを取ります。成熟企業や安定収益を持つ企業との相性が良いです。
支援型ファンドは、経営者と伴走しながら企業価値の向上を目指す“共創型”の支援者。財務型ファンドは、財務指標と資本効率を軸にリターンを追求する“合理型”の投資家。それぞれが持つ哲学とアプローチは、経営者との信頼関係にも影響を及ぼします。
近年は投資ファンド間の競争が激しく、どの投資ファンドも資金の出し手にとどまらない役割にも積極的です。支援型ファンドと財務型ファンドの違いは以前よりは小さくなりつつある点にも注目です。
支援型ファンドのメリット・デメリット
● メリット
①経営支援の享受:戦略立案、人材採用、営業支援など、経営課題に対する実務的なサポートが得られます。
②企業価値向上に直結:中長期的な視点で企業の成長を支援し、企業価値向上が期待できます。
③経営者との信頼関係構築:伴走型の支援により、経営者の理念やビジョンに寄り添った関係構築が可能となります。
● デメリット
①経営の自由度が制限される可能性:ファンド側の意向や支援方針が強く反映される場合、経営者の裁量が狭まることがあります。
②意思決定のスピード:ファンドとの協議が必要な場面が増え、迅速な判断が難しくなるケースがあります。
③支援内容のギャップ:ファンドの支援力や業界理解が不十分な場合、成果が限定的になる可能性があります。
財務型ファンドのメリット・デメリット
● メリット
①経営の自主性の確立:経営陣の裁量を尊重し、ファンドは基本的に口出ししないため、経営の自主性が保たれやすい傾向があります。
②財務改善に集中できる:資本構成の最適化や財務指標の改善に注力し、短期的なリターンを追求できます。
③Exit戦略が明確:投資期間や売却方針が定まっているため、経営陣も計画的に動きやすくなります。
● デメリット
①十分な経営支援が期待できない:実務的な支援は基本的になされません。経営課題は自社で解決する必要があります。
②企業文化や人材面の課題が放置されがち:財務指標に偏った支援となる場合、組織面の課題が見過ごされることもあります。
③短期的なリターン重視による圧力:投資ファンドが財務改善やExitを急ぐあまり、長期的な成長戦略が疎かになる可能性があります。
まとめ
支援型ファンドは、経営者のビジョンに共感し、共に汗をかくスタイルです。経営者が「自社の変革に外部の知見を取り入れたい」と考えているなら、支援型ファンドがフィットします。一方、既に確立された経営スタイルを維持したい場合は、財務型ファンドの活用が考えられます。
経営者による投資ファンド選定は、単なる資金調達ではありません。支援型か財務型か、その違いを理解し、経営者の価値観や企業のフェーズに応じたパートナー選びの重要な判断です。
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