投稿日 : 2025年5月1日 最終更新日時 : 2025年05月01日

【コラム】2024年度M&A買収プレミアムの動向と分析

M&Aの一形態である公開買付け(TOB)における買収プレミアムについて、2024年度(2024年4月~2025年3月)の動向を分析します。

 

 

買収プレミアムとは?

買収プレミアムとは、買収者が対象企業の株式を市場価格よりも高く買い付ける際の上乗せ分を指します。このプレミアムの設定は、買収成功の鍵を握る重要な要素です。

適切なプレミアムの設定は既存株主から株式取得するために不可欠であり、プレミアム水準を適切に設定する上では対象企業の評価、買収による将来的なシナジー効果などの総合的な検討が必要です。

 

 

買収プレミアムの目的

買収者が対象企業の経営権を取得するには、一定割合以上の株式取得が必要です。買収プレミアムの支払いは以下の背景や目的を持ちます。

  • 企業評価の反映:買収者が対象企業を高く評価していることを示す
  • 対象企業経営陣からの賛同:買収提案に対する対象企業経営陣からの賛同を得やすくなる
  • 既存株主への魅力ある提案:高いプレミアムが既存株主からの株式買い集めの決め手となる

 

 

2024年度のTOBプレミアム動向

下の図は、2024年度に公表されたTOB案件の買収プレミアムです(1ヵ月平均株価対比)。プレミアムの中央値は43.3%であり、7.0%~275.1%まで幅広く分散しています。

 

※注記:2024年度に公表されたTOB
※自己株TOB、ディスカウントTOBは除く

 

 

買取プレミアム上位3案件

買収プレミアムが高水準にあるのは以下の案件です。

 

ニッコンホールディングス⇒中央紙器工業

ニッコンホールディングスは物流・梱包事業を展開しており、中央紙器工業の段ボール製品製造事業と補完関係にあります。業容拡大を狙いTOBを実施しました。

 

Genesis1 ⇒ フェイス

音楽・映像などのコンテンツ配信を目的に設立された企業です。市場環境の変化に対応するため、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表しました。

 

可成屋 ⇒ 石井鐵工所

可成屋は投資・経営コンサルティングを行い、石井鐵工所は鉄鋼事業を主力とする企業です。経営意思決定の迅速化を図るためMBO(経営陣による買収)で株式を非公開化すると発表しました。

 

 

まとめ

TOBにおける買収プレミアムは、買収成功を左右する重要な要素です。2024年度の買収プレミアムは比較的高水準の印象です。

M&Aは案件ごとの特殊性が強いため個別案件ごとのプレミアムの高い低いは一概には言えませんが、M&A市場が活況であることや低い価格での買収に賛同しない対象会社側のガバナンスが全体的な買収プレミアムの高まりに寄与していると推察されます。

 

 

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