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投稿日 : 2025年7月31日 最終更新日時 : 2025年07月15日

【コラム】M&Aで「良い買い手」とは?企業売却における理想的な譲渡先を見極める視点

企業売却(M&A)を成功させる鍵は、単なる買収者ではなく事業の未来を託せる買い手を見極めることにあります。売り手視点から見た理想的な譲渡先とはどのような存在なのか、具体的なポイントを解説します。

 

M&Aにおける「良い買い手」の条件

M&Aでは高値で買ってくれる相手が必ずしも最適とは限りません。事業の価値を理解し、継承・発展させる能力のある買い手こそが良い買い手となり得ます。

 

●適正な売却価格と資金力

経済面からは良い買い手とは高い価格で迅速に購入してくれる買い手です。高い価格か否かが判断できない場合でも、市場動向、企業の将来見通し、資産・収益力などを踏まえた現実的で納得感のある価格であれば魅力的な条件と言えるでしょう。

買い手の資金力も重要です。十分な資金力や資金調達力がなければ高い価格は絵に描いた餅となります。また、資金調達方法が対象会社の事業運営に影響を与えることがあります。

 

●M&Aの目的・M&A後の経営方針が明確

M&Aの目的が明確であり、M&A後の経営方針が明確な買い手は良い買い手です。このような買い手は経営方針に不透明性やブレがなく、売り手だけではなく、対象企業の従業員にも安心感をもたらします。

経営方針や経営スタイルが売り手に近い買い手は対象会社への影響を抑え、スムーズな承継・統合が期待されます。敢えて買い手が経営方針や経営スタイルを変革することで対象企業内にある潜在力を引き出すこともあります。

重要なのは経営方針や経営スタイルそのものよりも、事前に目的や方針を明確化していることです。

 

●円滑な事業統合への目配せ

M&A後の社内外の混乱や従業員の離脱は事業を毀損します。こういった事態が生じる可能性を事前に予測しながらソフトランディングを図れる買い手は理想です。事業の毀損を心配することなく、良い形で事業を引き継ぐことのできる買い手です。

 

●事業へのコミットメント(本気度)

ビジネスには晴れの日もあれば、雨の日もあります。事業に対する本気度が高い買い手は、雨の日には最大限の工夫や改善をして困難を克服する努力を行います。そうすることで事業の未来が切り開かれることもあるでしょう。また、一時的な利益ではなく、長期的な事業成長を目指す意志があることも重要です。他方で、本気度が低い買い手は初めから清算や転売という選択肢を考えるでしょう。

 

良い買い手企業に関するリスクと対応法

 

良い買い手を見極める際には、潜在的なリスクの理解も不可欠です。

 

●買収後のリストラや事業改善の懸念

買収完了後にリストラや事業改善が行われる場合、ステークホルダーに深刻な影響を及ぼす可能性があります。リストラや事業改善無しではそもそもM&Aが成立しないケースも多くみられるため、一概にネガティブな要素とは言い切れませんが、M&A後に買い手が何をするかを把握しておくことは重要です。

なお、雇用継続に関する約束をどのような文言でM&A契約に盛り込むかも重要となります。

 

●意思決定の遅さによる交渉停滞

関係者が多い買い手は意思決定が遅れがちです。買い手が大企業や関係者が多い場合はキーパーソンとの信頼関係を構築し、進捗状況を確認しながら進めると良いでしょう。

 

●明確な理由のない遅延

初期的な興味を示すものの具体的な話が進まない買い手は注意が必要です。売り手が本気度を見せない/情報を開示しないため話が進まないケースもありますが、買い手側に原因がある場合はM&Aに支障をきたすことが予想されます。

 

まとめ

M&Aは事業の終わりではなく「再スタート」です。事業の価値を承継できる買い手を選ぶことが、売却後の事業成長に直結します。経済的条件だけでなく、企業文化や経営姿勢、統合後のビジョンまで広く見渡して判断することが重要です。

 

【スクエアコーポレートアドバイザリー株式会社について】

上場会社又は非上場会社の買収・売却・事業承継・出資・統合等に際し、助言及び実行支援を行っております。