多くの企業において今期からコロナの影響がフルに年次決算に寄与します。今は皆が危機感を共有しており、金融市場も企業に対して寛容です。今までできなかったグループ内再編や事業売却があれば、コロナ決算期である今期が良いタイミングとなり得ます。実際、コロナ禍であってもグループ内再編及び事業売却の動きが止まっている訳では有りません。

 

1.   今期はコロナ禍による特殊な決算期

3月決算企業は総会が終って一段落し、第1四半期決算発表シーズンを迎えています。多くの企業において今期からコロナの影響がフルに年次決算に寄与します。業種にもよりますが、多くの企業において厳しい決算も想定される決算期となります。

来期以降は抑制されていた需要の揺り戻しや経済対策により徐々に改善していくとの見方も有ります。感染状況次第の面も有りますが、将来振り返った場合、今期は特殊な決算期(コロナ決算期)と言えそうです。

また、コロナ禍は生活様式を変えるほど人々の生活を脅かしており、恐らく生活者が肌身に感じる影響度はリーマンショック以上と思われます。金融機関や株主だけではなく、取引先や従業員といった皆が危機感を共有している点がコロナショックの特徴です。

他方で、金融市場は企業に対して寛容です。銀行や国は企業支援のための融資体制を手厚く整えています。証券市場全体として株価は大きく下がっておらず、既に(今期決算見通しというよりは)コロナ後を見据えた株価になっているとの声も聞かれます。

 

2.   コロナ決算期における事業組替え

コロナ禍をきっかけに、オフィス利用(賃料)や採用(人件費)などの固定費の見直しが起こっています。更に広い視点でグループ内再編や事業売却などの事業組替えの動きも引き続き存在します。従来、グループ内再編や事業売却は従業員・取引先の問題、決算に与える影響、人事やポストの問題等、様々な配慮の下で実行されたり/されなかったりしてきました。

コロナ禍では上記の通り、皆が危機感を共有しており、金融市場も企業に対して寛容です。今までできなかったグループ内再編や事業売却があれば、コロナ決算期はそれらを決行する良いタイミングとなります。

2020年4月以降のグループ内再編及び事業売却として以下のような事例が有ります。なお、M&Aには通常時間を要するため、現在公表されているM&Aは「コロナ禍でも動きを止めなかったM&A」と理解頂いた方が正確かも知れませんが、動きを止めなかった点で着目に値します。

 

3.   グループ内再編の事例

1.子会社統合

三井物産(3月決算)・・・持株会社方式

公表日: 2020年6月15日

概要:   小売・外食事業者向け食品・日用品雑貨の中間流通機能を担う子会社4社(三井食品、ベンダーサービス、リテールシステムサービス、物産ロジスティクスソリューションズ。いずれも100%子会社)及びその保有事業について、三井物産流通ホールディングス(新設。三井物産100%出資)を新設し、その傘下で資本統合

目的:   各社に分散していた知見や資産の組織横断的な活用を加速。4社の事業運営で培った機能のさらなる先鋭化・高度化を実現

決算への影響:記載無し

 

サイオス(12月決算)・・・合併方式 

公表日: 2020年7月6日

概要:   キーポート・ ソリューションズ及びグルージェントサイオステクノロジー(いずれも100%子会社)をサイオステクノロジー(100%子会社)に吸収合併

目的:   国内の主要子会社3社における人的資源・知的財産・資金等の経営資源を集中し、更なる業務運営の効率化と生産性の向上を図る

決算への影響:連結子会社間の合併であるため連結業績に与える影響は軽微

 

2.親会社事業を子会社に移管

キャノンマーケティングジャパン(12月決算)

公表日: 2020年4月22日

概要:   キャノンマーケティングジャパン内の文教営業本部の事業をキャノンITソリューションズ(子会社)に承継・移管

目的:   ITソリューションズビジネスにおけるワンストップ体制の確立と更なる事業拡大

決算への影響:連結業績に与える影響は軽微

 

3.子会社株式のグループ内移管

パソナ(5月決算)

公表日: 2020年5月27日

概要:   パソナが保有するキャプラン(子会社)の全株式をパソナHRソリューション(子会社)に移管・売却

目的:   グループのHRテック事業を更に強化するグループ体制を構築

決算への影響:2020年5月期の個別決算において関係会社株式売却損1,873百万円を特別損失として計上。連結損益への影響は軽微

 

4.   事業売却の事例

1.第三者への完全売却

オウケイウェイブ(6月決算)

公表日: 2020年5月25日

概要:   OKプレミア証券(証券会社・証券先物会社)の株式を第一商品へ売却

目的:   対象会社の業績が当初想定していた計画通りに進捗しておらず、達成するには時間を要すると考えており、会社としても財務健全性を高める必要性があったところ、第一商品より買収提案を受けた

決算への影響:連結営業損失以下の各損失は減少。また、関係会社株式売却損が見込まれる

 

三菱マテリアル(3月決算)

公表日: 2020年6月1日

概要:    西日本開発(ゴルフ場)の株式を太子ゴルフ観光へ売却

目的:   会社方針の一つとして事業ポートフォリオの最適化を掲げ、着実に取り組みを進めている中、ゴルフ事業で信頼と実績のあるグループに売却することが西日本開発の将来的な成長に資すると判断

決算への影響:記載無し

 

オリンパス(3月決算)

公表日: 2020年6月24日

概要:   オリンパスの営む映像事業を日本産業パートナーズ(投資ファンド)に譲渡(意向確認書の締結、今後最終合意)

目的:   オリンパスの映像事業について、売上規模が縮小しても継続的に利益を生み出せる事業構造とするべく、収益構造の改善を図ってきたが、2020年3月期まで3期連続で営業損失を計上するに至っている。 このような状況において、オリンパスはよりコンパクトで筋肉質且つ機動的な組織構造とすべく映像事業を分社化・譲渡

 

イオン(2月決算)

公表日: 2020年6月30日

概要:   国内で「ザ・ボディショップ」を営むイオンフォレストの全株式を英国ザ・ボディショップ・インターナショナル・リミテッドへ売却

目的:   イオングループは主要な改革の1つにグループ事業構造の改革を掲げ、事業ポートフォリオの見直しを進めている。(ボディショップ事業に関する)マスターフランチャイズ契約が期間満了を迎え、日本市場における今後の事業展開等を協議した結果の売却

決算への影響:影響は軽微

 

2.合弁相手への事業売却(合弁解消)

高島屋(2月決算)

公表日: 2020年4月17日

概要:   貝印との合弁会社であるフードアンドパートナーズの株式(高島屋保有分全ての66.3%)を貝印へ売却

目的:   小売事業の不調が続いていることで黒字化には至っておらず、また事業改善には既に着手した売場の絞り込みに加えて、卸売主体への事業転換等でさらに時間を要することが想定される。合弁先である貝印と協議の結果、卸売事業・商品開発に知見を持つ貝印に株式譲渡することを決定

決算への影響:業績に与える影響は軽微

 

3.完全子会社を合弁会社化(株式売却による関連会社化)

JR九州(3月決算)

公表日: 2020年4月30日

概要:   完全子会社であるJR九州ドラッグイレブンの株式51%をツルハホールディングスへ売却(JR九州の100%子会社からツルハ51%:JR九州49%の合弁会社とする)

目的:   ドラッグイレブンの事業成長と企業価値向上のためには、同社の強み・特徴を活かしながら、ツルハグループの事業ノウハウ等の経営資源を活用し、地域性と収益性を兼ね備えた企業として更なる成長を目指していくことが最善と判断

決算への影響: 2021年3月期より持分法適用関連会社となる予定。2021年3月期の連結業績予想については精査中(いずれも公表時点)

 

5.   数少ないチャンスの決算期

コロナ禍であってもグループ内再編及び事業売却の動きが止まっている訳では有りません。また、現時点において企業や投資ファンドからは公式・非公式に様々な投資買収の相談が寄せられているとの声も聞きます。今後、徐々に「コロナ禍をきっかけとしたM&A」が増加すると思われます。

今は皆が危機感を共有しており、金融市場も企業に対して寛容です。今までできなかったグループ内再編や事業売却があれば、コロナ決算期が良いタイミングとなり得ます。日本企業には内部留保が厚い企業や資金調達余力のある企業も多く、本業強化にむけた投資意欲もそれ程減退していません。

経理部門や企画部門の方々におかれては、今決算期を今までできなかったことができる数少ないチャンスの決算期ととらえて頂くと、経営に資する興味深い社内提案・社内意見に繋がると思われます。

 

注:各事例は各社の開示情報に基づきます。

 

【スクエアコーポレートアドバイザリー株式会社について】

当社ではグループ内再編及び事業売却の検討・準備・実行・対外公表の一気通貫のサポートも行っております。検討のお役に立てそうな場合はお気軽にご相談下さい。